法学部法律学科 3年 7410041082 深澤 亮 課題1 ■担当キーワード Fブルーム ■いつ頃の人間か  ブルーム(Benjamin Samuel Bloom)は1913年に生まれ、1999年に没したアメリカの心理学者である。1950年代から1970年代にかけて、後述の「masterly learning」、邦訳「完全習得学習」を提唱した一人として知られる。 ■どんな教育方法を提唱したか  ブルーム自身が「masterly learning」と呼んだ、一般に邦訳では「完全習得学習」と呼ばれる教育方法論を提唱した。同方法はその後、John B. Carrollらの手によりリファインされ、現在も世界の教育に影響を与え続けている。  学習者全員を常に一定の習得状況に収斂させるよう教育することにより、最終的には学習者全員(学習者の95%)が同一の学習目標に到達できる。そのためには適切な評価を利用することが必要だと、ブルームは同方法論の中で主張した。  要される評価は大きく分けて三種類。事前の診断的評価、学習過程の形成的評価、学習終了時の総括的評価に分類される。これらの評価を通し、個々に、あるいは等しい学習状況の学習者グループごとに適した教育を行うことにより、学習者全員が学習目標に到達できるとした。  診断的評価は教育開始前に実施する評価であり、学習予定者の実態を把握、教育計画の立案を行うためのものである。また、教育計画の開始時に想定される学習状態(学習のレディネス)に満たない学習予定者を明らかにし、事前教育を行うための指針としても利用する。  形成的評価は教育活動の中で、学習者が何をどの程度習得しているのか確認するためのものである。習得状況にばらつきがあるようならば、習得状況を収斂させるための方策をとる必要がある。例えば習得状況ごとにグループ分けを行い、それぞれに適した教育を行うことで、その時点で期待される習得状況を全員が達成できるようにする。また、学習者の多くが期待される習得状況に達しない場合は、教育計画の変更を行い、やはりその時点で期待される習得状況と学習者の習得状況を一致させる。この形成的評価とそれに応じた教育を繰り返すことにより、学習目標に向かう教育は進行していく。  総括的評価は最終的に学習者が、学習目標に到達したかどうかの評価を行うためのものである。形成的評価により適切な教育が行われた場合、この総括的評価で学習者全員の学習目標達成が確認される。また、この評価から得られる情報を織り込み、この時点のまでの教育計画の改善策を検討、次期計画の立案、策定を行う。次期教育計画に対する診断的評価の色も帯びる。  ブルームは特に形成的評価の役割を重要視し、学習者全員の習得状況が常に満足であることが重要だと論じた。  なお、それぞれの「評価」の方法論についても同氏は多く論じている。 ■今日、どのような教育方法として定着しているか  国内においては、形式上、入学試験や授業中のいわゆる小テスト、定期(中間、期末等の)試験として各評価は定着しており、それに応じた教育を行うとしている点は、ブルームの完全習得学習の影響と言えるだろう。  しかし方法論の真意が、今日の教育方法に定着しているかは疑問である。ブルームは完全習得学習を説いた自らの著書の序文にて、次のように述べている。 本書は、生徒の学習の評価について述べたものであり、主として現在と将来の教師のために書かれたものである。評価を正しく用いるならば、教師は生徒の学習に著しい改善をもたらすことができるであろう。本書の主要な関心事は、生徒の学習の改善ということにある。 (B.S.ブルーム, J.T.ヘスティングス, G.F.マドゥス『教育評価法ハンドブック ──教科学習の形成的評価と総括的評価──』(第九版), 1974年(昭和54年))  つい最近のことである。必修と定められた教科を生徒が見履修のまま、卒業を迎えようとしていた事態が頻発している。つまり高等学校として生徒が習得したことを保証する予定だった教科について、生徒に習得させるどころか、教育を実施するつもりもなかったという惨事だ。  その是非はさておき、どうしてそのような事態に陥ったのか。各方面で様々に論じられているようだが、一貫して「教育予定がなかった教科は大学の入学試験で不要だから」という声が聞こえる。また、大学の入学試験に生徒を合格させることで、教師や学校の名声を上げることが大切だとも。もしこれが真実であるならという話になるが(これだけ多くの声があるのならば幾ばくかは真実なのだろうが)、今日の教育において、ブルームの意図した「完全習得学習」が定着していると言えるのだろうか。先の引用の通り、同氏は「生徒の学習の改善」を関心事と述べた。そのための方法論が、完全習得学習である。しかし今日の教育は、教師は、生徒の学習になど興味はない。もっと言えば、生徒になど興味はないようだ。生徒の出力する「大学入学試験に対する合否」という値が、教師の一大関心事のようである。つまり、根本的に完全習得学習とは相容れない現状がある。  問いに対し、答えよう。今日のどのような教育方法にも、ブルームの主張した方法論は定着していない。 ■参考文献 [1] B.S.ブルーム, J.T.ヘスティングス, G.F.マドゥス 梶田叡一, 渋谷憲一, 藤田恵璽訳『教育評価法ハンドブック ──教科学習の形成的評価と総括的評価──』(第九版), 第一法規出版, 1974年(昭和54年) [2] 国立教育研究所『国立教育研究所広報 第126号』, 2000年(平成12年) ■その他のキーワード @ソクラテス Aコメニウス Bペスタロッチ Cヘルバルト Dデューイ Eブルーナー Gドルトン・プラン